未来のクリーンエネルギー「水素」を自分の手で生み出そう!(水素の発生実験)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「燃えると水になるクリーンな気体」、そんな魔法のような物質を聞いたことがありますか?実はそれ、水素のことなんです。今回は、そんな未来のエネルギーともいわれる水素を、身近な材料を使って発生させる、ドキドキの化学実験に挑戦してみましょう!
水素の発生実験に挑戦!
今回は、亜鉛と塩酸を使って水素を発生させる実験です。前の時間には酸素の発生実験もやっているので、性質の違いを比べてみるのも面白いですよ。
まずは準備から!
水素を発生させるには、以下の材料と器具を使います。
材料
•亜鉛(花状、小さな粒状のもの)1g •10%塩酸 7mL
器具
•試験管 2本 •マッチ •燃え差し(火が消えたけどまだ熱いもの) •濡れ雑巾(万が一の安全対策!)
水素を集める手順
① 水素を発生させる!
試験管にうすい塩酸を入れ、そこに花状亜鉛を加えます。すると…細かい泡がシュワシュワと元気に発生!この気体こそが、今回の主役、水素です。この反応は、化学の世界では次のように表せます。
Zn (亜鉛) + 2HCl (塩酸) ⟶ ZnCl₂ (塩化亜鉛) + H₂ (水素)
亜鉛が塩酸に溶けることで、塩化亜鉛という物質に変化し、同時に水素が発生するのです。
発生した水素は、水上置換法という方法で試験管に集めます。気泡の出が悪い冬場などは、試験管をお湯で少し温めてあげると反応が活発になりますよ。
② 火を近づけてみよう!
集めた水素に、火のついたマッチを近づけてみましょう。(※1本目は空気が混じっている可能性があるので、2本目の試験管を使いましょう!)さて、ここでクイズ!火を近づけると、どうなると思いますか?
正解は……「ポンッ!」と小さな爆発音を立てて燃えるんです!
これは、水素が空気中の酸素と激しく反応(燃焼)して、水(H₂O)に変化した証拠。この音は、反応のエネルギーで周りの空気が一瞬でふくらんだことで鳴る、いわば「ミニチュア版の爆発音」なのです。実際にやってみると、「シュボッ!」とか「ヒュン!」とか、条件によって音が変わるのも面白い発見ですよ。
③ さらに実験!
もしもう1本水素が溜まったら、試験管に石灰水を加えて振ってみましょう。酸素の実験では石灰水に変化はありませんでしたが、今回はどうでしょうか?…おそらく、変化はないはずです。石灰水が白くにごるのは二酸化炭素の性質なので、水素や酸素とは違うことがわかりますね。
科学の深掘り:不思議な亜鉛の謎
今回使ったのは「花状亜鉛」。実は、亜鉛の形によって水素の発生しやすさが全く違います。同じ亜鉛なのに、なぜでしょう?
ヒントは「表面積」!
例えば、角砂糖と粉砂糖、どちらが水に速く溶けるか想像してみてください。すぐに溶けるのは粉砂糖ですよね。それは、粉砂糖の方が水に触れる面積(表面積)が広いからです。
これと同じで、複雑な形をした花状亜鉛は、ツルツルの粒状亜鉛よりも塩酸に触れる面積が広いため、反応がたくさん起こり、勢いよく水素が発生するのです。こうした「なぜだろう?」を考えるのが、科学の醍醐味ですね!実験後の亜鉛は、表面の光沢がなくなり黒っぽく変身します。これは、亜鉛が溶けだしたり、表面に別の物質ができたりするためです。もし再利用するなら、やすりがけをしてピカピカの面を出す必要があります。
左:実験前 右:実験後
まとめ
生徒たちは器具の扱いにもすっかり慣れ、1時間で手際よく実験を進めることができました。その成長ぶりに感動です!身の回りの現象も、化学の目で見ると新しい発見がたくさんあります。ぜひ、次の「なぜ?」を探してみてください。
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